母乳が自分の体の中でどのようにしてつくられるのか、不思議ですよね。
母乳がつくられる段階は3つあります。「母乳がつくられる第一段階」と「母乳がつくられる第二段階」では、母乳はホルモンによってつくられます。赤ちゃんが母親のお腹にいるときは、無菌の羊水に包まれて育ちます。生まれると赤ちゃんのまわりにはたくさんのウイルスや細菌が存在します。赤ちゃんにとって、まず必要なものは、それらの病原体から守ってくれる免疫なのです。このため、「母乳がつくられる第一段階」のときは、免疫物質の分泌型IgAをたくさん含むだけでなく、病原体を食べてくれる白血球も含まれています。
赤ちゃんはその後も母乳をとおして免疫をもらい続けますが、特に生まれてすぐの間にいちばんたくさんの免疫を初乳からもらいます。産後2~3日たつと、赤ちゃんは栄養をつけて成長するためにエネルギーが必要になってきます。ちょうどこの頃に「母乳がつくられる第二段階」になり、エネルギーの源となる乳糖・脂肪が増えてくるのです。母親と赤ちゃんの関係というのは、驚くほどうまくできているのですね。「母乳がつくられる第三段階」になると、乳房でつくられる母乳の量は、乳房内から赤ちゃんが飲みとってくれる量によって決まってきます。
母乳がつくられる第一段階
妊娠中、たくさんのホルモンが乳房の中にある乳腺に働きかけ、乳腺は血液から母乳をつくる準備をしています。乳腺の細胞は生まれてくる赤ちゃんのために母乳をつくれるようにいろいろな変化を起こしています。これが、母乳をつくり出す第一段階になります(これを「乳汁生成I期」といいます)。
母乳がつくられる第二段階
出産のとき、赤ちゃんに続いて胎盤が出していた黄体ホルモン(プロゲステロン)、卵胞ホルモン(エストロゲン)というホルモンの血液中の量が急激に少なくなります。なかでも黄体ホルモンの量が急激に減ることにより、乳腺は母乳をたくさんつくり始めます。一般的に、出産が終わって36~96時間くらいすると母乳の量が増えてきます。これは、母乳をつくり出す第二段階になったことを意味します(「乳汁生成II期」)。母乳の量を増やしていくために、プロラクチン、コルチゾール、インスリンというホルモンが活躍しています。この母乳をつくり出す第二段階はホルモンの変化によって起こり、出産後3~8日間くらい続きます。
それでは、母乳をつくり出す第二段階(乳汁生成Ⅱ期)になると、どうして母乳が増えるのでしょうか?母乳をつくり出す第一段階では、母乳をつくる細胞(乳腺細胞)同士が離れています。つまり、細胞と細胞の間にすきまがあるのです。乳腺細胞がつくった乳糖(母乳に含まれる糖分)は、乳腺腔内(乳腺の細胞からつくられた母乳が蓄えられるところ)に入ってきてもこの細胞のすきまを通って、また母親の血液の中に逆戻りしていきます。逆に、ナトリウム、クロール、たんぱく質はこのすきまを通ります。この時期の母乳(初乳)はナトリウム、クロールが多く、これらは塩の成分なので、少ししょっぱい味がします。
たんぱく質の多くは、赤ちゃんをウイルスや細菌から守ってくれる分泌型IgAです。母乳をつくる第二段階になると細胞のすきまはくっついてきます。このため、一度乳腺腔内に入った乳糖は乳腺腔内にとどまります。乳糖は、乳腺腔の中に水分を引き寄せる作用があります。このようにして「乳腺腔の中に乳糖と水分が増える=母乳の量が増える」ということになります。ナトリウム、クロール、たんぱく質は細胞と細胞のすきまを通って乳腺腔内に入れなくなるので、母乳の中でのナトリウム、クロール、たんぱく質量は減っていきます。
母乳がつくられる第三段階
分娩後約9日を過ぎると、母乳をつくり出す第三段階に移っていきます。この母乳をつくる工程が安定する時期を「乳汁生成Ⅲ期」とよびます。この段階では、乳房でつくられる母乳の量は、乳房内から赤ちゃんが飲みとってくれる量によって決まります。
左右の乳房から飲みとってもらえる母乳の量に差があれば、右と左の乳房で母乳をつくる量は違ってきます。乳房内の母乳を“空”に近づける、つまり、しっかりと赤ちゃんに飲んでもらうことにより、母乳の量は増えていきます。ですから、母乳の出を維持するためにも、頻繁にしかも赤ちゃんが乳房を離すまでしっかり飲ませることが大切なのです。
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